ラヴァーズ・ロックが誕生した歴史と現在のレゲエシーン、日本のラヴァーズ・ロック=和レゲエについて紐解く【プレイリストあり】
僕自身、Lovers=Lovers Rockというワードが認知したのがCDコンピ”Relaxin’ With Lovers”シリーズが入り口でした。それから雑誌”relax”のラヴァーズ特集で興味を持ちはじめ、Relaxin’ With Loversの日本人シリーズの第一弾がリリースされ速攻聴いて”日本人でも良質なレゲエがあるじゃん”と知り、更にラヴァーズやレゲエの深みにハマって行きました。
実際そんな方も多かったのではないでしょうか?
そのラヴァーズ・ロックが誕生した歴史と現在のレゲエシーン、日本のラヴァーズロック=和レゲエを紐解きました。
最後にラヴァーズロックのSpotifyのプレイリストも作成しましたのでじっくり閲覧いただけたら幸いです。
僕は何かのラヴァーズ特集の記事で松任谷由実の“Pearl Pierce“が掲載されていて、速攻リサイクルショップでゲットした記憶があります。
まずは本作のタイトルにあるLovers=Lovers Rockについて説明します。
(Wikipediaの情報を主として歴史を明記します)
1. ラヴァーズ・ロックとは?
ラヴァーズ・ロック – Wikipediaja.m.wikipedia.org
ラヴァーズ・ロック (Lovers rock) はレゲエのサブジャンルの一種。歌詞の主題は主に恋愛やロマンスであり、甘い質感のあるサウンドを特色とする。1970年代中期のロンドンで誕生。
ラヴァーズ・ロックの歴史
ラヴァーズ・ロックの起源はKen Boothe (ケン・ブース)やAlton Ellis (アルトン・エリス)、Johnny Nash (ジョニー・ナッシュ)、John Holt (ジョン・ホルト)らが歌い、国際的ヒットとなったロックステディや初期レゲエのラブソングにあたる。
1970年代に入り、ジャマイカのレゲエ音楽家の間でラスタファリ運動が活発化すると、ジャマイカではメッセージ性の高いプロテストソングが流行し、ラブソングを中心とするスタイルは廃れていった。そして、ラブソング系のスタイルはむしろイギリスのカリブ系移民の間で受け入れられ、独特の発展を遂げていった。それはレゲエのベースラインとリズムにシカゴ・ソウルやフィリー・ソウルの滑らかなサウンドの感覚を加えたものであった。
最初のラヴァーズ・ロック楽曲と認識されているのは1975年、Louisa Mark (ルイーザ・マーク)が14歳の時に発表したRobert Parker (ロバート・パーカー)「I Caught You In A Lie」のカバーである。その他の最初期のラヴァーズ・ロック楽曲はGinger Williams (ジンジャー・ウィリアムス)の「Tenderness」、T.T. Ross (T・T・ロス)の「Last Date」である。また、同時期にロンドンの音楽プロデューサーDennis Harris (デニス・ハリス)は新しいジャンルの名を冠したレーベル”ラヴァーズ・ロック“を立ち上げ、主なミュージシャンにはDennis Bovell (デニス・ボーヴェル)とJohn Kpiaye (ジョン・カパイ)を起用した。
ラヴァーズロックにおいて最も影響力のある人物の1人であるプロデューサー、ミュージシャン、ソングライターでもあったデニス・ボヴェルはのちに日本人アーティストの作品にもたびたび関与してます。
Caron Wheeler (キャロン・ウィーラー)らが所属したサウスロンドンのコーラストリオ、Brown Sugar (ブラウンシュガー)は「I’m In Love With a Dreadlocks」や「Black Pride」といった楽曲で「コンシャス・ラヴァーズ」というサブジャンルを開拓した。ラヴァーズ・ロックはチキン・ハイファイ、サクセス・サウンド、ソファーノBなどのロンドンのサウンドシステムにおいて頻繁に選曲された。
1979年にデニス・ボーヴェルがプロデュースしたJanet Kay (ジャネット・ケイ)の「Silly Games」は全英シングルチャート最高2位を記録するヒットとなった。また、Mad Professor (マッド・プロフェッサー)も1981年に”ARIWA (アリワ・レーベル)“を設立し、Deborahe Glasgow (デボラ・グラスゴー)など多くのラヴァーズ・ロック作品をプロデュースした。イギリスで誕生したラヴァーズ・ロックのスタイルはジャマイカにも波及し、Gregory Isaacs (グレゴリー・アイザックス)、Dennis Brown (デニス・ブラウン)、Sugar Minott (シュガー・マイノット)、Freddie McGregor (フレディ・マクレガー)ら多くのジャマイカ人歌手もこのスタイルを取り入れた。ブラウンの「Money In My Pocket」は1979年に全英シングルチャート最高14位を、マイノットの「Good Thing Going」は1981年に最高4位を獲得するヒット曲となった。
1980年代には”Fashion (ファッション)“や”レヴュー”といったレーベルが多くのラヴァーズ・ロック作品を発表した。同レーベルから1986年にレヴューから発表されたBoris Gardiner (ボリス・ガーディナー)「I Wanna Wake Up With You」は大きなヒットとなった。
Wickipedia
1990年代にはMike Anthony (マイク・アンソニー)、Peter Hunnigale (ピーター・ハニンゲイル)、Donna Marie (ドナ・マリー)らがこのジャンルを代表するアーティストとなった。
ラヴァーズ・ロックは、1980年代後半から1990年代にかけて主流の人気を失いましたが、最近では復活しています。
Koffee、Hollie Cook、Estelleなどのアーティストは、ラヴァーズ・ロックの遺産に敬意を表しつつ現代の影響を取り入れ、ジャンルの精神を生かし発展してます。
ラヴァーズロックの現在は本記事の下記に続きます
ラヴァーズロックのレコードは、イギリスのローカルレコード店で爆発的に売れていたようですが、全英チャートに入り込むくことは非常に少なかったようです。
それは日本のクラブシーンのようなアンダーグラウンドなものだったのかもしれませんね。
2. 日本のレゲエシーンの原点
我が国日本でも現在においてもラヴァーズロックは非常に人気があります。
その過去に遡ると日本でのレゲエは70年後半あたりにFlower Travellin’ Band (フラワー・トラベリン・バンド)、上田正樹、Pecker (ペッカー)、豊田勇造のリリースあたりが最初と言われてます。
レゲエが勢いを増すのは、1979年にジャマイカの歌手Bob Marley (ボブ・マーリー)が休暇で日本を訪れたときでした。マーリーはフラワー・トラベリン・バンドのコンサートに参加したいと思っていました。情報を探し、ペッカーに会うと、彼からはグループはすでに解散したことを知らされそれ以降二人は仲良くなり、ペッカーはボブ・マーリーへ高く評価されている日本人とジャマイカのアーティストのコラボレーションを提案し、この提案により1980年にペッカーがアルバム『ペッカー・パワー』を、豊田がアルバム『血を越えて愛し合えたら』をそれぞれジャマイカで制作し発表してます。さらにペッカーは同年にはジャマイカの「ChannelOne」と「TuffGongStudio」で、『インスタント・ラスタ(InstantRasta)』がレコーディングされました。
これらのアルバムには、日本人アーティストの吉田美奈子、坂本龍一、松岡直也、向井滋春、坂田明、ジャマイカのアーティストからAugustus Pablo (オーガスタス・パブロ)、Sly & Robbie (スライ&ロビー)、The Wailers (ウェイラーズ)、Rico Rodriguez (リコ・ロドリゲス)、Carlton “Carly” Barrett (カールトン・バレット)、Marcia Griffiths (マーシャ・グリフィス)が参加。これらの2枚のアルバムは、日本とジャマイカの両方のアーティストに影響を与え、日本にレゲエを広めていると見なされてます。
3. 日本のラヴァーズ・ロックの最初
日本において”ラヴァーズロック”の原点は1990年リリースの小泉今日子”La La La…”と言われてます。
この曲はファッションシーンでも絶大な人気を得ていた藤原ヒロシとMUTE BEAT (ミュートビート)の屋敷豪太がプロデュースした歴史的名曲で歌謡曲とレゲエが最高のバランスで融合されたメチャクチャ心地よい楽曲となりました。
また藤原ヒロシはいとうせいこうとのユニットSUBLIMINAL CALMでも素晴らしいラヴァーズロック作品を残してます。
冒頭でもありました”Relaxin’ With Lovers”シリーズで日本人版としてリリースされた作品に収録された中島美嘉によるオリジナル・ラブの作品”接吻”のラヴァーズカヴァー (2003年) が日本におけるラヴァーズロックが非常に注目され始めた大きなターニングポイントになりました。
因みそのサウンドは森俊也、屋敷豪太、松永孝義、ダブミックスはDennis Bovell (デニス・ボーヴェル) とまさに最強な布陣でコアなレゲエリスナーのハートをガッツリ掴み、当時の中島美嘉の人気とオリジナルラブのお馴染みな名曲で非常に幅広くのリスナーを巻き込んでいきました。
以降クラブシーンにおいてReggae Disco Rockers、Slowlyなどの近年の洗練されたレゲエアーティストのリリースも目立ってきました。
歌謡曲とレゲエは非常に相性が良く、1990~2000年の高校生だった僕自身はレゲエ=ボブ・マーリー=ドレッド・ヘアーという印象 (僕自身田舎育ちだったからかもですが😆) もありましたがお茶の間にもすっかり馴染んで行ったようにも思います。
余談ではありますが
ラヴァーズロックというカテゴリーでは無く非レゲエアーティストのレゲエ楽曲は歌謡曲含め日本人作品は古くからあるのでそちらをディグする楽しみもありますね。
4. ラヴァーズ・ロックの現在
レゲエのリディムにポップで聴きやいメロディーによりラヴァーズロック・シーンは現在も引き継がれており、ラヴァーズの作品はリリースされ続けてます。
海外においてはHollie Cook (ホリー・クック)、レゲエ/ラヴァーズに収まらない多彩な音楽性に富んでいるニュージランドのSister Sledgeの「Thinking Of You」カヴァーが大ヒットしたLord Echo (ロード・エコー) や、同じくニュージーランドのFat Freddy’s Drop (ファット・フレディーズ・ドロップ)など良質なアーティストによる素晴らしいラヴァーズ作品が多数あります。
ここ日本では前述のSlowly、Reggae Disco Rockersに続き、asuka ando、ナツ・サマー、フランキーパリス、キミーゴ a.k.a qimygo、Bagus!、当店でのコラボミックスでお馴染みKHさん所属するHF International などがあり、今でもラヴァーズロック作品が日本で多数リリースされてます。
その音楽性として、オーセンティックなラヴァーズは今も受け継がれ、ここ近年の影響からディスコライクなダンサブルなラヴァーズロックも人気を得ていますね。
また近年ではラヴァーズロックにフォーカスしたディスクガイド『LOVERS ROCK RECORD GUIDE Romantic Reggae Selection 1970s-1990s』も出版されました。
その内容も非常に濃く、更にはDJ(セレクター)、アーティストがチョイスしたオススメ盤も掲載され日本でのラヴァーズロック熱を押し上げるものとなりました。
前述ラヴァーズロックのディスクガイド『LOVERS ROCK RECORD GUIDE Romantic Reggae Selection 1970s-1990s』はズング・ズング氏による音楽レーベル『It’s a Romance Production』にて執筆されました。ディスクガイドの出版から、直近のラヴァーズロック再熱サポートの功績は非常に素晴らしいものとなりました。
またそのレーベルからはフランキーパリスなどの秀逸なラヴァーズ作品のアナログカットもされており、関西の『Rock A Shacka』レーベルからもズング・ズング氏によるラヴァーズロックのリイシュー企画もリリースされてます。
日本のラヴァーズロック時系列としては
1. 小泉今日子 / La La La… リリース
2. 雑誌relaxのラヴァーズロック特集掲載
3. 雑誌relax企画のラヴァーズロック日本版コンピレーションリリース
4. 中島美嘉 / 接吻 リリース
5. Asuka Ando、HF International らの新世代ラヴァーズロックリリース
6. ラヴァーズロックのディスクガイド『LOVERS ROCK RECORD GUIDE Romantic Reggae Selection 1970s-1990s』出版
という感じでしょうか
あとKHさんとはコラボ作品をリリースしてますので彼の作品を沢山紹介させて頂きます☺️
HF International名義でリリースされた大貫妙子”都会”のラバーズロックカヴァーは大ヒットし某オークションでも高値で取引されてました。様々なアーティストによる”都会”のカヴァーの原点はHF Internationalだと思われますが、彼らのDJ的選曲眼による先見性が際立っていると実感出来ます。
HF InternationalのKHさんと当店コラボによるミックスもリリースしてます。
コチラはKHさん自身のHF International名義の楽曲も含め、近年の国産レゲエをガッツリ収録してます。
まるで日本産ラヴァーズの見本のようなミックスに仕上がってます。
メチャクチャ良いです!
オマケにKHさんのmixcloudから和モノラヴァーズミックスがアップされてますのでコチラもチェックを是非!
オマケと言いつつメチャクチャ内容良いです😆
5. ラヴァーズロックをプレイする日本のセレクター (DJ)
①KH (HF International)
まずは当店として外す事は出来ない上記記載HF InternationalのKHさん。自身がディスコな楽曲だったりバレアリックな楽曲も好みなところはラヴァーズロックなスタイルにもメチャクチャ相性抜群ですね。
②SPECIAL REQUEST
ここ最近では彼らのリリースはありませんがレゲエ・セレクター・クルー=SPECIAL REQUESTはラヴァーズロックにおいての功績は非常に素晴らしいものです。
僕の知る限りではラヴァーズロックを広めた一番初めのセレクターユニットではないでしょうか?
過去にはミックスCDを数枚リリースとUltra Vybeさんから素晴らしいコンピとリイシュー7インチを数枚リリースされてました。今現在はJet Setさんのチャートレビューされています。
SPECIAL REQUESTのメンバーであるKASUMIさんは過去に僕たちが主催するイベントで出演して頂き素晴らしい音楽を提供してくれました。
③DJ KENTA (ZZ Production)
所謂ヒップポップを主とした幅広いジャンルをプレイするDJ KENTA氏ですが、2023年初一発目リリースのミックスCDがメチャクチャ素晴らしいラヴァーズロック作品でした。
初回リリースは即完売し早くも2ndプレスされました。昨今のミックスCDリリースで早々にリプレスされるのは珍しく、その内容の素晴らしさを物語ってくれます。
上記の”Lovers Magic”以外にもラヴァーズロックミックスをDEB MUSIC、ARIWAなどの音源作品のオフィシャルリリースもしてます。
現在レーベルは廃盤ですがAmazonなどのサイトから購入は可能でした。
http://DJ KENTA : BROWN SWEETNESS をAMAZONで購入する
DJ HIKARU
オールジャンルをプレイするDJでラヴァーズロック専門のDJではありませんが野外フェス等にも超引っ張りだこのDJ HIKARU氏。氏がラヴァーズロック専門レーベル『ARIWA』音源のみをミックスしたCDをリリースしております。さらには限定エクスクルーシヴな7inchも付いている下記CDがメチャクチャ最高です。
ラヴァーズ外①吉沢dynamite.jp
ラヴァーズロックというカテゴリーではありませんが、和モノレゲエでは吉沢dynamite.Jpさんの和レゲエミックスもメチャクチャ秀逸です。
和モノディスクガイド“和モノA toZ”の内容で掲載されている和レゲエなどチョイスし、非レゲエDJによる、堀り士だからこそ発見できた国産レゲエなチョイスで終始楽しめる内容になっているmixcloud音源もあります。必聴です!
ラヴァーズ外② 音楽レーベル”アイタル/Ital”
アナログリリース、ミックスCDリリース、noteのレゲエな記事の執筆しているレゲエ中心の音楽レーベル”アイタル/Ital”も非常に素晴らしいです。
Kaja & Jammin’による和レゲエ人気7″盤「ありがたや節」としてお馴染みでの彼らの隠れた名曲「GOOD VIBRATION」をアイタルさんがカヴァーしたアナログを10”リリースしてます。
その10”に付属しているDJ KEITAさんのCDがメチャクチャ最高の内容でした。
コチラはラヴァーズロックではありませんが、和モノレゲエのダブ特集のミックス作品です。
ダブは比較的ライトな一般リスナーにおいては、比較的敬遠されがちで退屈だな〜と思われやすいジャンルだと思います。
King TubbyやLee Perryなどの所謂定番のダブ作品は元のリディムを知ることでその楽しさ・良さ・深さを知ることができますが、聴き馴染みのある歌謡曲的メロディーや日本語歌詞をダブ処理で抜き差しすることで、ダブの取っ付き難い部分を感じさせません。まさに対極するものが混合する秀逸な作品だと思います。
下記のサウンドで王道のダブと、日本産ダブの違いを楽しんでみてくださいw
1000枚以上のミックスCDを聴いている自分ですが、ぶっちゃけ2023年一番聴いたミックスCDと断言できます。
それくらい最高です。
6. マザームーン (Asahi Kurata) がセレクトしたSpotifyプレイリスト
最後に僕がチョイスしたラヴァーズロックのSpotifyプレイリストを掲載します。
ド定番な曲を和洋新旧、所謂ラヴァーズロックの定義として外れる曲も含めてチョイスしました。
2023年3月の時点で合計9時間、随時更新・追加してますので合計時間はさらに増えていきます😁
垂れ流しで楽しんで頂けたら幸いです。
※順不同です